ひとつ目のテーマは裁判員制度
来年5月スタートの裁判員制度について弁護士会の中にも賛否がある。弁護士会のHPではその意義について、「…法律家でない人たちの感覚や社会常識が裁判の内容に反映され、裁判が身近で分かりやすいものになり、一般市民の司法に対する理解と信頼が深まる期待がある…」と述べているそうだ。
<裁判員制度に賛成か反対か>
三宅久之
・最高裁の説明では、上訴すると(裁判員のいない)二審では一審の判断を尊重するという。それでは、三審制の意味はないのではないか。
本日のゲスト
井上薫(元判事・現在弁護士)
著書「つぶせ!裁判員制度 (新潮新書)
井上薫
・素人である裁判員に本当に裁判ができるのか。
・裁判員の仕事は3つある。事実の認定、法令の適用、量刑。
・事実の認定について。
裁判員は日常生活のままでできるというが、日常生活での判断方法とは異なる。例えば証人尋問をやって事実認定をすることは日常生活の中ではない。法廷は特殊な空間である。
刑訴317条に「事実の認定は証拠による」とある。証拠とは法廷で正式に取り調べた証拠をいう。この証拠によって判断すべきで、例えばテレビの情報などを元に判断してはいけない。
・法令の適用について。
ある犯罪事実に該当するのかどうか、前科があれば刑が重くなる、酌量の余地があれば酌量減刑する。それが分かるだろうか。
・量刑について
例えば、放火は財産の損害より公共の危険つまり大火になる可能性を重視する。(ボヤで済んだとか)財産的損害に注目すると量刑を間違える。
保護法益といって、この規定は何を守っているか、これは刑法の勉強でする。
・これらについて裁判員が分からなければ裁判官に聞けば良いではないかということで、最高裁HPもそうなっている。裁判官が説明して、裁判員がはいと答える場面を考えているようだが、それは違う。
裁判員法8条に、「裁判員は独立して職権を行使する」とある。裁判官の説明を聞いて真に受ける必要はない。裁判官と別の意見を言って結構である。裁判官に教えてもらえばいい、という話ではない。
・法律を勉強して分かっている人間でないとできない。
・自分も今の裁判官の裁判がベストだと思っている訳ではない。それを改善する具体的手段として素人6人を入れるやり方(裁判員制度)がよくない。
田嶋陽子
・イギリスなどでは陪審員をやっている。
井上薫
・あれは権力による人権の侵害を防ぐ、そのためには仲間に裁判された方がいいという欲求からでき維持されている。日本とは土壌が違う。(裁判員制度は)裁判官が教えてくれるからできると言っていて、裁判官の権力行使を抑えるという発想はない。
福山哲郎
・6人が法律を知らないから全てに判断力が欠けているかのような言い方は言い過ぎではないか。
宮崎哲弥
・量刑についてバラつきを肯定するか、一律であるべきか。
井上薫
・今でもバラつきはあるけど少ない。大体の幅があってその範囲内で量刑している。自分が思うにその幅が狭い。法律はもっと広い。
桂ざこばの問に答えて
・証拠だけによって事実を認定するというのは、(たまたま)個人的に知っている知識を使ってはいけないということ。
田嶋陽子
・映画「それでもぼくはやっていない」を見たか。
井上薫
・あれは良くできている。本当みたい。私はあれをもとに「痴漢冤罪の恐怖」という本を出したくらい。
田丸麻紀
・あれが現実に近いということか。
井上薫
・あれが現実です。本当です。
<裁判員制度で一番得をする人は誰か>
井上薫
・裁判官は気楽になる。責任逃れができるから。
国民が得をするか? 人権規定の運用にも法律知識が必要、それが保証されない裁判は怖い可能性がある。
辛坊アナ
・(パネラーの)皆さんが考えているのは、裁判員になること。被告人になった時はどっちがいいか。
井上薫
・皆さんは裁判員になることしか考えていないけど、冤罪もある。
宮崎哲弥
・(裁判員制度により)死刑が増えるという考えがあるがどう思うか。
井上薫
・いろいろな要素があって良く分からない。
宮崎哲弥
・凶悪事件が増えていないのに、2004年に死刑が増えている。昭和50年代から60年代はもっと多かった。プロの(裁判官の)死刑の判断も揺れているということ。
金美齢の発言を受けて
井上薫
・(死刑を言い渡すのは)怖い。自信を持って(死刑の言渡しを)しても、やはりあれで良かったのかという心は少し心のどこかに残る。
辛坊治郎
・戦前の陪審員がなくなったのは、裁かれる側がどちらかを選ぶことができて裁判官による裁判を望んだから(陪審員制度が)なくなった。
井上薫
・(裁判員制度について)被告人の立場から誰も発言しない。彼らの立場を代弁する人がいないと偏った話になる。
宮崎哲弥
・根本的な問いだが、なぜ重大事件に限ることとなったのか。
井上薫
・こちらが聞きたい。ためしに痴漢事件でやって正しく事実認定ができるかどうか実験してみればいいのである。痴漢事件だってそんなに簡単に決める訳ではない。
福山哲郎
・裁判を改善すべきという方向は(井上さんも)同じだと思う。
金美齢の発言を受けて
井上薫
・とりあえずやってみるというのが困る。とりあえずやって死刑になった人はどうするのか。
もうひとつのテーマ
もともとこれがひとつ目だった。「元厚生次官宅襲撃事件」の犯人像をテーマに収録したが、放送前日出頭した男に対する捜査が始まったため止むを得ずカットとなった。
最後のテーマ
中山成彬元国土交通大臣の「日教組発言」を巡って
中山前国交相が、「日教組が強い県は学力が低い」と発言したことに対し、全国学力テストの点数が低い県が日教組の組織率が低い県でもあったとの指摘がある。これについて中山氏は「日教組の組織率」とは言っていないという。また、仮に「日教組の組織率」を問題にするとしても件の「日教組」の組織率が低い県では「全教」の組織率が高いということだから、結局教員組合の組織率は低くない訳である。
中山発言に対するマスコミの批判が揚足取りのようで、改めて表面的なマスコミ報道だけで判断してはいけないことがよく分かる。
とは言え、昔ならともかく今は教員組合の姿勢が学力や教育の最大の問題とはいえないと思う。長年に渡り「ゆとり教育」を推し進めてきたのは当の文部省である。
中山恭子夫人の中山前大臣あてのメッセージはとても良かった。たまにはこういう美しい日本語を聞きたいと思う。
<パネラー>
三宅久之、金美齢、田嶋陽子、中山成彬(前国交大臣)、桂ざこば、宮崎哲弥、福山哲郎(民主党衆院議員)、田丸麻紀
<ゲスト >
井上 薫(元判事)


